はじまりは…

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間近でよく見ると、 少し長めの茶色の髪で、耳にはピアス。端正な顔立ち。柔らかな印象がする少し垂れ気味の瞳でくっきりした二重瞼。すっと通った鼻、少し厚めの唇。口元の左下にはホクロがひとつ。 これらが絶妙なバランスで小ぶりな顔に収まっている。 そして何よりも嫌みのない柔らかな笑顔。 一瞬 目を奪われた。 ふと思い出す。もう1つ有名なのが、本能に忠実なヤリチンだとか、バイだから女だろうが、男だろうが、見境ないとか色んな噂があって……。 そんな噂の先輩とは絡むような接点なんて、この先 僕にはないと思っていたのに。 「俺、置き傘があるから、遠慮しないでこれ使って良いよ?」 先輩の声は、耳障りの良い甘い声で、イケメンは声まで良いんだと思った。 ダークブルーの傘を僕に手渡す。その時、先輩からふわりと良い香りがした。 匂いもイケメンかっ!って内心 思ってしまった。 「あ、ありがとうございます。お借りします」 「じゃあ、またね」 そう言って満足そうに笑顔で手を振り、校内に戻っていく先輩。その先輩の後ろ姿をドキドキしながら見送った。 アイドルとか、芸能人に会えたような高揚感。 胸が高鳴りドキドキする。 こんなの初めてだ――――… 目眩がするほどの熱い日差しのようなその笑顔が、キラキラと眩しくて、あまりにも彼が綺麗で魅力的で、僕はその笑顔から目が離せなくて――… その瞬間――――… 人は些細な事で、簡単に恋に落ちるのだと初めて知った―――…
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