第一章:ガラハド、誕生

2/3
前へ
/183ページ
次へ
 そんな心配をよそに、侯爵夫妻はさっそく子供の『守護宝石授与の儀』を()り行うべく、王都に(おもむ)き、最も権威ある大聖堂に子供を連れてやってきた。  もちろんその聖堂の中でも最高位にあり、霊験(れいげん)あらたかと言われる司祭に、事前にきちんと予約を取り付けている。  聖堂への寄付金もたっぷり持って、準備万端。 「いつでも来い! ダイヤモンド!」  そんな期待に満ち満ちた侯爵夫妻の様子に、気づかれないよう溜息(ためいき)をつくと、司祭は気を取り直して儀式を始める。 「天と地を治める大いなる神よなんたらかんたら……」  よく聞き取れないが何やら有難そうな祈りの言葉は、司祭の腹式呼吸から生まれる深い声の響きと相俟(あいま)って、神秘的かつ(おごそ)かな儀式の雰囲気を高めていった。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加