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卒業記念夜会
一年が経ち卒業生を送るパーティーが開催された。
フランクは卒業後、王宮に出仕する事が決まっている。
貴族たちは婚約者がいれば、パートナーとして一緒に夜会に参加する。
エレノアはフランクの婚約者だ。
けれどこの一年、彼と会話をした事はなかった。
勿論、この夜会にエスコートしてくれるはずもない。
「あなたさ、婚約者がいるんじゃなかったの?」
ルームメイトのマリアが私に訊ねてきた。
彼女は私にフランクがいる事を知っている。
「婚約者はいます。けれど、夜会に一緒に行こうと誘われていません。先に言っておきますけど、ドレスや宝石を夜会の為にプレゼントしてくれたわけでもないので、自分で揃えました。以上」
私も一年経って少しは学習した。
はっきり言えば、それ以上嫌味を言われない。
何も言わずにいるから、言われっぱなしになるのだ。
自分をしっかり持って、恥ずかしいわけではないと堂々とした振る舞いをしていれば、相手はとやかく言ってこない。
「なんだか、最初の頃より態度が大きくなったわね。婚約者に相手にされない事は、自慢でも何でもないのに」
「嫌味ですか?弱い者虐めですか?」
「別に虐めてなんていないわよ。それに貴方弱くもなんともないじゃない」
「なら、ご自分の事を考えたらいかが?人にかまっている時間なんてないでしょう。勉強ができなくて留年しても知りませんから」
マリアはかなり勉強で後れを取っていた。
試験の成績が悪くて留年するかもしれないと泣きつかれたから、仕方なくテストに出そうなところを教えてあげた。
感謝されてもおかしくない。彼女に嫌味を言われる筋合いはない。
「分かったわよ。ごめんなさい。貴方がいなければ留年していたかもしれないわ。ありがとう」
「やっと個室に移れますわね。念願かなって、お別れですわ」
昨日の敵は今日の友とはよく言った物で、裏表がない分、彼女とは気が合うような気がしていた。
長く過ごすと情も湧く。
「本当に、やっと夜ぐっすり寝られるわ。今までありがとう。なんだか寂しいわね」
「本当ですね。私こそ、ありがとう」
結構よい関係が築けていたのかもしれない。
彼女とは二年に上がってクラスが変わる。もうあまり顔を合わせないと思うと寂しく感じた。
私は薬学科へ進む。彼女は淑女コース(花嫁修業)だ。
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