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フランクはイザベラではなくミランダをエスコートして会場内に入ってきた。
勿論私には見向きもしない。
「イザベラはやはり男爵令嬢だから駄目だったのね」
「そうね、ミランダにしたのね」
先日、今日のフランクのお相手が誰なのか、生徒たちの間で話題になっていた。皆が気になっていたのだろう。
さすがイケメン高位貴族の令息だ。
私は密かに、イザベラが有力だと思っていた。だからフランクがミランダを選んだのには驚いた。
庇護欲をそそるような愛らしいイザベラは、やはり爵位が問題だったのかもしれない。
「顔より爵位の方が大事って事なのかしら?イザベラ様はかなり悔しそうな表情だったわ」
マリアが私に報告してくる。
普通は婚約者を同伴するのが当たり前だ。よほど日陰な存在なのね私。
婚約者が予想メンバーにも入っていなかった事に我ながら呆れてしまう。
「そろそろ私も美容とかに興味を持たなくては駄目ね」
自分のあまりにも地味な姿を考え、つい言葉に出してしまった。
「なんで急にそういう話になるのよ。貴方は勉強だけしてればいいのよ」
「なんで興味持っては駄目なのよ」
「だって、貴方化けそうだもの」
「どういう意味?」
マリアが言うには、私はお洒落したら別人になってしまうという。このまま地味でいる方が性に合っているらしい。
よく分からないが、着飾ったところで、子供にしか見えない私は恥をかくだけなのかもしれない。
このまま目立つことなく、勉強だけしていようと思った。
私はね、選んでいるのよとマリアは言う。
彼女いわく、自分はモテているが、それをあまり周りには言わないのだそうだ。
「ダンスはあまり得意ではないから、誘われても踊らないわ」
かなり上から物を言っているマリアだったが、上級生にダンスを申し込まれると喜んで踊りに行った。
別に羨ましいとも思わない。あまりにも色恋に興味がなさ過ぎて、ダンスはどうでも良かった。
私は壁の花だ。
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