ダンス

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ダンス

婚約解消は先生の協力もあり滞りなくスムーズに終わった。 エレノアは二年になり、薬草学の勉強に励んでいる。 「なにあなた!久しぶりに見たら凄く成長したじゃない?背がのびたの?」 「入学してから十センチくらい伸びたの。私も驚いたわ」 マリアが随分驚いている。エレノアは身長だけでなく女性らしい体つきにもなってきた。 「蛹から蝶とはよく言ったものね。今年の夜会はダンスパートナーになりたい令息で溢れかえるでしょうね」 その言葉を聞いて、ハッとした。 まずいわ…… 表情が固まってしまった。エレノアにマリアが尋ねる。 「どうしたの?」 「いいえ、なんでもないわ」 そう言い、またカフェテリアでお茶でもしましょうと約束をしてその場を離れた。 驚くことに、何でもそつなくこなすと思われている私は極端に運動音痴だった。 「私……ダンスが踊れないわ」 リズムに乗る事ができない。 「困ったわ……」 私が薬草をすり潰しながら一人呟いていると、いつの間にか後ろに先生が立っていた。 「どうした?」 「あ、なんでもありません」 まさか先生にダンスを教えてくださいなんて言えない。薬草のことならまだしも、畑違いもいいところだろう。 傾国の美女と言われるほど美人に成長したエレノアは、女性も見惚れてしまったほどだと学園の生徒たちから一目置かれていた。 あまりに褒め称される状況に、エレノアはまいっていた。 「全然変わってない」と言ってくれるのは先生くらいだった。 目立てばなにかと噂の的になる。 正直ダンスができないとか知られたくないし、ダンスを教えて欲しいとも同級生には言えなかった。 「学園で教わるわけにはいかないわ」 エレノアは仕方がないので、ダンスのレッスンをしてくれるプロの人を紹介してもらおうと叔母に手紙を書いた。 「いい先生がいるわよ!半日で完璧なダンスを教えてもらえるわ」 叔母の勧めでやって来たのはまさかの王宮。 叔母は淑女のマナーを王宮で教えている、サイクス夫人を紹介してくれた。 その方はサイクス公爵の妻で、淑女の鑑といわれる有名人だった。 そして私は地獄の特訓を受ける事となった。 「まぁ!なんて美しい子なの!」 二時間みっちりしごかれて、ワルツを教わり終わった後、パートナーが必要だわと言い出して、夫人はレッスンしていた部屋を出て行った。 私は肩で息をつき、まだ続くのねとげんなりしてしまう。 しかし、そこに連れてこられた男性は…… 「フランク……」 「エレノア、君……」 それは王宮で、王子の側近の一人として出仕しているフランクだった。
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