納得できない

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納得できない

 昨年度の高校1年生男子の平均身長は、168.6cmだという。今、僕の身長は154cm。クラスの中でも断然小さい。この学校は、中高一貫校だけど、隣の中等部に紛れても気付かれない自信はある。 「いやいや……そんな自信、ダメだろ」  足元から伸びるアスファルトの上の影を踏みながら、トボトボ帰る。愛花里チャンと並んだら、僕の影の方が短いんだよな。確実に。  予想外の理由で振られたことを受け止められなくて、思わずあんな大見得を切ってしまった。大きくなる……身長を伸ばすなんて、やる気と努力でなんとかなるものじゃない。しかも時間的余裕もない。どんなに有効な方法があったとしても、結果が出る前に彼女に背の高いカレシが出来てしまったら水の泡だ。現時点で愛花里チャンとの身長差は、21cm。どう考えても無理ゲーじゃないか? 「くっそぅ……!」  大切に温めてきた恋心が玉砕した悲しみよりも、低身長を嘲笑(わら)われたことが悔しくて泣けてくる。  高身長がなんだよ。そんなに格好良いのかよ。そんなに……そりゃあ、まぁ、格好、いいよな。例えば、図書室で棚の最上段にある本を然り気なく取ってあげられるし、不意にボールが飛んできても彼女を背中で庇って守れるし、ケンカして話を聞いてくれない彼女には壁ドンして捕まえられるし……いいことづくめじゃん。  だけど――思いの丈は、身の丈なんかじゃ測れない。  ずっと、中等部のときから好きだったんだ。
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