7日後……

1/1
前へ
/8ページ
次へ

7日後……

 異変に気が付いたのは、椅子に座ったときだ。いつもより足首がスースーして、なんとなく制服の裾が短く感じた。 「合原ぁ。お前、背伸びた?」 「え?」 「ちょっと黒板の横に立って。わぁ、やっぱ伸びてんだろ!」  伸長アプリを使ってから、ちょうど7日目の昼休み。周りの友達がワイワイ集まってきて、背比べが始まった。 「うわ、ショックー! 俺、祥樹(よしき)に抜かれそう!」 「なんだよ、遂に成長期到来かぁ?」 「だったらいいけどね」  呑気に笑い合っていたら、ふと強い視線を感じた。教室の後ろの席から、愛花里チャンが僕を見ている。『一体、なにをしたの?』強張った眼差しには、微かな嫌悪感が滲む。  ……別にいい。どうせ振られているんだ。今更傷つくもんか。僕の唇は、思わず弧を描いた。 「159cm。まぁ、凄い。育ち盛りの男の子ねぇ」  放課後、保健室で身長を測ってもらった。保健の先生は、直近の健康診断の記録と身長計の目盛りを見比べて驚いている。 「最近、たんぱく質と亜鉛を沢山食べるようにしているんです」 「あら。勉強しているのね!」 「僕、低いから、もっと身長伸ばしたくて……」 「そうなのね。でも栄養素はバランスよく食べなきゃダメよ」 「はい。カルシウムとか、ビタミン類もちゃんと食べて、睡眠も運動もしていますから」 「まぁ……本当によく勉強したのね」  付け焼き刃の知識だけれど、すっかり感心されてしまった。スクールバッグを手に保健室を出ようとして、僕はふと足を止めた。 「先生。身長を伸ばすのに、青い光ってなにか関係ありますか?」 「青い光? ブルーライトのこと?」 「うーん……スマホから出るんですけど……」 「ブルーライトは、人間の目が捉えることの出来る光の中で1番波長が短いのね。波長が短い光は強くて、しかも青い色はチラチラ散乱するから、目が疲れやすいの。目の疲れから肩こりや頭痛が起きたり、睡眠不足になったりするわね。睡眠は成長ホルモンに影響するから、背を伸ばしたいなら長時間ブルーライトを目に浴びるのは逆効果でしょうね」  やっぱり、そうだよな。あのアプリで青い光を浴びたあと、僕もネットで調べたんだ。 「分かりました。ありがとうございました」  ペコリと一礼して、保健室をあとにする。あのアプリ……確かに身長が伸びたんだけれど、一体どういう仕組みなんだろう。僕の身体の中では、なにが起きているんだろうか。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加