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「だああ! もう腹立つ!」
社長室に戻り、大声を出して怒りを発散させていると、応接のソファに腰掛けながら優雅にコーヒーを啜っていた高城が口を開いた。
「なかなか勇猛果敢な男ですね。たとえクビになっても構わないという気迫を感じる。まあ、彼に会社を辞められたら困るのはこちらですけどね」
痛いところを突いてくる。たしかに佐伯の優秀さは疑いようもない。年齢が若いから課長だが、実際のところ営業部長よりも仕事ができるのは誰もが知っている。
「……あいつ、俺たち夫婦に愛はあるのかと聞いてきたんだ。明らかになにかを知っている」
高城はコーヒーを置いて、興味深そうに食いついてきた。
「捺美さんが相談したんじゃないですか? 女が男に相談する時は、乗り換えようと思っている時ですよ」
「極端なんだよ、お前は! お前の周りはそういう女が多いのかもしれないけど、捺美は違うからな!」
「初恋だからって幻想を抱きすぎなんですよ。モテる女性っていうのは、そういうことを意図せずしてしまうものなんですよ」
高城が言うと、なぜか説得力がある。反論する言葉が思い浮かばずにいる俺に、さらに高城は畳みかける。
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