底辺バンドマン、売れっ子になったのでかつて一方的にコンプレックスをいだきまくっていた後輩ギタボに会いに行くも悪魔の契約をさせられる

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朝。スズメがちゅんちゅんと鳴いている。 俺はゴミ山の上で寝転がり、朝日に目を灼かれ涙を流していた。 すごい世界を見た。 早見は本物の悪魔だったし淫魔だった。ちなみに俺は淫乱だった。いや、多分奴の唾液には催淫効果があって、多分俺はそれで己の限界を突破してしまったのだろう、多分。 とにかく凄かった。凄すぎて俺は怖くなった。こんなん一生続けるなんてありえない。俺は奴が眠りこけてる隙に奴の部屋から逃げ出すと、徒歩で自分の家までなんとか帰ろうとしたが途中で腰が砕けてちょうどゴミ収集場のゴミ山に倒れ込んでしまいそのまま朝を迎えた。メジャーデビューしているバンドマンが、映画の主題歌が決まったバンドの顔ギターボーカルが!ゴミ山で朝日を見ながら泣いてたなんて週刊誌にかかれたくない! 必死の思いで立ち上がって、俺は片手で腰を支えながら徒歩で帰路につくのだった。 「えっこわ」 帰宅すると、早見が俺の部屋の中を浮いて漂っていた。奴は上半身裸で背中からは黒い翼をはやし、その翼がパタパタと優雅に羽ばたいていた。手にはタブレット端末を持って、真剣な表情で何かを読んでいる。 「どうやって入ってきたんだよ。悪魔野郎」 「窓から。割って」 「割って?」 みると、窓が割られていた。床にはガラスの破片が散らばりロボット掃除機が一生懸命小さな破片を吸いながら大きな破片をあちこちに移動させている。くそが! 「悪魔め!弁償しろよ!?まあ、お前のような雑魚リーマンが弁償できるような代物じゃねーけどなあ?給料いくら?年収なんぼ?貯金はできてますかあ?」 「2億。俺の貯金は2億あります。先輩は?」 「にににににおく!?!?」 どうせ100万円もないか、多くて500万円ぐらいだと思っていたら、億越えを宣言されて膝の力が抜けそうになった。俺の貯金は5000万だが、これは浪費が激しいからそうなっているだけだし、これまで稼いだ金を全て貯金に回して税金も取られていなかったらと考えることでなんとか倒れずに済んだ。  「はっ。たった二億円で」 「ドルです」 「どどどどどどどる!?!!?」 ドルだと言われ尻もちをついてしまった。石油王じゃないか!幸い早見はタブレットに夢中で俺がずっこけたところを見てはいなかったので、何事も無かったかのようにすぐに起き上がった。 「嘘つけ!!サラリーマンがどうやってそんな稼ぐんだよ?あ、身体か?身体だろ?淫魔だもんな?肉体労働って大変だなあ」 「FXや株や印税やボーナスやインセンティブで稼ぎました。で、先輩の貯金は?」 「人に貯金を聞いてはいけないと教わらなかったのか?とにかく!!弁償しろよ!あと、浮くな。地に足をつけろ。パパラッチにとられたらどうするんだよ!俺が人を浮かせてたって書かれるだろうが!」 早見は床に降り立つと、タブレットを見るのをやめて、なるほどねえと呟いた。 「章太郎さん、悪魔に魂売りましたね?突然バンドが成功したのも契約のおかげってわけか……」 「はあ?別に?枕営業なんて誰でもやってんだろ。魂売ったつもりはねえよ」 「枕営業もしてたんですか。俺はそのことを言ってるわけじゃなくて、俺じゃない他の悪魔との契約のことを言ってるんです。魂を売る契約は、そのことすら忘れるから納得がいきます」 「だから売ってない!魂なんて売れるわけねーだろ!」 早見はわざとらしくクソデカため息をついて、俺にタブレット画面を見せつけてきた。画面には何かしらの表が映し出されており、俺の名前の横に(魂売却済み)と書かれていた。 「なんだこの表は!今お前が作ったんだろ!」 「これは悪魔法人東京支部が公表してる由緒正しき悪魔契約顧客リストですよ」 「知るかよそんな悪魔法人!俺は誰にも魂を売ってねえ。もちろん、お前にもな」 俺は力強く早見を指差したが、人差し指を早見に握られカエルのような悲鳴をあげた。 「グェェェェ」 「昔の先輩だったら絶対枕営業なんかしなかったっすよ。どんなに売れなくても、どんなに言い寄られても、自分の、決して踏み外さない一線を守ってた」 「おうおう、お前俺の何を知ってる?まるで枕営業が悪いみたいな言い振りだな?ムラムラした奴らが2人いて、その片方が権力をもっていて、もう片方が仕事を欲していた、それだけだろ?」 「プライドないんですか?」 「プライドで何が買えるんだ?一円にもなりゃしねぇんだよ。枕が悪って言い張る奴はな、お堅い倫理観とプライドで勝手に自分を縛り付けて自滅していくだけの雑魚だろ」 「前の先輩っすね」 「バカにしてんのか?」 「軽蔑してるんすよ今の先輩を」 「殺す!!」 俺は悪魔に飛びかかった。悪魔は軽く俺をいなすと、俺は勢いよくつんのめって破れた窓ガラスの破片へとダイブしてしまった。瞬間、頭には死がよぎる。それと、売れっ子バンドマン死亡の見出し。身体がガラスでズタボロになる寸前で、早見は俺を空中に引っ張り上げた。 「危な!何ガラスにダイブしてるんですか」 「お前が避けたからだろ!部屋の中を飛び回るな!俺を降ろせ」 「降ろすとまた殴りかかってきますよね?」 「決まってんだろ。もう許さんぞ早見。お前が悪魔だろうが淫魔だろうがボコボコにしてゴミ捨て場に捨ててやる。今日はちょうど燃えるゴミの日なんだ。覚悟しろ」 「わかりましたよ」 早見はぷかぷか浮かんで俺を寝室まで運ぶと、ベッドの手前に降り立った。そして俺を解放すると、ベッドの前で手を広げて、目を閉じた。 「殴っていいですよ」 「避けるなよ」 「避けませんよ」 俺は大きく振りかぶって、早見の左頬にストレートをぶち込んだ。思いっきり殴ったのに、早見は一言も声を発さず、微動だにせず、ベッドの前で手を広げたまま立っていた。 「まだですか?」 「クソボケ悪魔が!!もう一発なぐってやる」 今度こそ張り倒してやると気合いを入れ、背中が壁につくまで距離をとり、助走をつけて殴りかかった。 早見はすっと身体を右に移動させて、俺はキングサイズのベッドにダイブした。 気づけば、背中に早見が乗っている。 「殴られた仕返しに一発やっていいですか?」 「はあ?お前が避けたから殴れなかっただろうが!」 「いやいや、左頬、殴りましたよね?先輩」 「ィヤァァァァアア」 早見は俺をベッドに押さえつけて、世界で50枚しかないTシャツを背中から破いた。
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