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姉弟は、そのような迷信なんて信じていなかった。
先生もきっと困ったのだろう。校長先生や理事長先生から、黒いチューリップなど校内に置いておけないから処分しろと言われていたのかもしれない。
でも二人は、絶対にあきらめなかった。あきらめないでくれた。私が花を咲かせ、枯れるその時までお世話をして、愛してくれると言ったのだ。
花として、こんな嬉しいことがあるだろうか。
――ありがとう、エリカ、エルトン。
喋ることができない私は、精一杯花びらを揺らして二人に御礼を伝えたのだった。
――あなた達の愛は受け取ったわ。必ず、一番綺麗な花を咲かせてみせるからね……!
私は、ただの花だ。特別な力など何もない。望んだことがあるとすればそれは、私を愛してくれる二人の幸せのみ。彼等のために、最高の花を咲かせること、それだけ。
そう、そのはずだったのに。
「四年生の男の子が、川で流されて亡くなったんですって……」
「た、大変だ!六年生のクラスの天井が落ちてきて!」
「これはもう、学級閉鎖を通り越して、学年閉鎖をするしかないのでは?こんなにもみんなが休んでしまっては」
「なんてことだ……い、一年生のクラスで、集団食中毒なんて……!」
私が花を咲かせてすぐ。ラッセル学園初等部では、不幸なことが立て続けに起きた。
四年生の男の子が川に落ちて死んだのを皮切りに、建物の天井が落ちてくる事故や、伝染病の流行。さらには、集団食中毒なんてことまで起きて、合計で七人もの子供達が命を落としてしまったのである。
最初に死んだ男の子がいたのは、四年二組のクラス。そこは、私達チューリップの鉢植えが飾られていた窓、そのすぐ向こうのクラスだった。
「あのチューリップのせいよ!」
誰かがそう言った。
「黒いチューリップなんか咲かせるから、この学校が呪われたのよ!」
なんでそうなるんだ、と唖然とさせられた。私は、何も悪いことなんてしていない。学校の子供達の不幸なんて願ったことさえない。水難事故は子供達だけで川遊びをしたせいでたまたま起きてしまった事故だろうし、学校の建物は老朽化が進んで崩れかかっていたのも事実。集団食中毒は給食センターの管理ミスで、伝染病に至っては流行しているのはうちの学校だけの話ではない。
それなのに、そのすべてが私のせいだと大人達は言う。
彼等は、何かを悪者にしなければ不安で仕方なかったのだろう。当然双子も、双子の友達もそんなはずはないと主張したが、先生達は誰一人子供の声に耳を傾けてはくれなかったのである。
しまいには。
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