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 スマホのバイブレーションが鳴ったので、舘山京太郎は電話に出た。 「……。Yes,I know.(はい、分かっています。)」  しばらく向こうの話を聞いてから、京太郎は答えた。 『リセット日本支部の代表、山岸アリアと山岸千哉夫妻を殺せ。アジア諸国で散々辣腕をふるってきたお前らしくない。日本が一番、リセットの活動が活発になっている。我々の計画に支障が出たら困るのだ。』 「はい。承知致しております。ご心配なく。」  電話の相手との会話は全て英語だ。京太郎は電話を切った。軽くため息をつく。その時、ふわっと甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった。恋人の水口桂香の持っているワイングラスから香ったのだ。 「電話、終わった?」 「ああ。」 「なあに?苦い顔しちゃって。何か、嫌な指令でも来たの?はい、これ、どうぞ。」  桂香は京太郎の気持ちをほぐすように笑いながら、ワイングラスを差し出した。 「Thanks.」  受け取って、一口飲んでから口を開く。 「嫌な指令だ。」 「そう。」  桂香が京太郎の後ろから抱きついてきた。 「ねえ。わたしが裏切ってるって言ったら、どうする?」  京太郎は軽く笑って、小さなダイヤが文字盤にちりばめられている腕時計をはめた、桂香の腕を撫でた。 「お前はそんなことをしない。」  京太郎はワイングラスをテーブルの上に置くと、桂香の腕をほどき正面から抱き合った。見つめ合うと、どちらからともなく唇を重ね合わせた。
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