イノチガケ

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『あなたには幻滅しました』 『結局お前も欲に溺れた金の亡者か』 『正義ぶって、結局自分も同じじゃん』 『チャンネル登録外します』  様々な批判コメントが殺到していた。  混乱気味でSNSを開いてみる。  俺が何をしたっていうのか……。 『車屋チャンネル、車屋の本性……』  DMで送られてきた、動画のタイトル。俺の本性って……?  その動画を投稿したのは、弓削社長だった。 『車屋チャンネルの車屋は……恩を仇で返す最低な人間です……』  弓削社長が、カメラの前で神妙な面持ちで告発している。  俺が最低な人間だって?  一体どういうことなんだ?  約三十分ある動画を、一気に全部見た。  どうやら俺は……弓削社長に嵌められたみたいだ。  車屋チャンネルを伸ばしたコンサルタントは弓削社長本人。なのに何の支払いも受けていない。  車屋は自分の儲けしか考えていない最低な人間だと、ひたすらに俺を批判した動画がそこには上がっていた。  たくさんの酒を奢り可愛がってあげたのに、本当は腹黒い不義理者。  まさに俺が暴露しているような内容を、弓削社長は動画にしていた。  再生回数は瞬く間に伸びていき、あっという間にトレンド一位になった。  それと同時に増えていく、悪質なメールやメッセージ。  減っていくチャンネル登録者数。  見るに堪えないアンチコメントに、精神が歪んでいきそうになる。  そうか。  弓削社長は、元々こうする気だったんだ。  俺を伸ばすだけ伸ばしておいて、できるだけ高いところまで上らせておいて、一気に梯子を引く。  もう一度俺を、地獄に落とそうとしたんだ。  弓削社長は、根っからの良い人だと思っていた。  でも、今になって思う。  弓削社長は、俺のことを暇つぶしの道具としか見えていなかったんだ。  ずっと俺で遊んでいたんだ。  二日、三日と止まぬアンチコメント、殺害予告に耐えられなくなった俺は……チャンネルを削除した。
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