4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「車屋君さー、この先どうするの?」
知り合いの社長から飲みの誘い。ウェブ広告の会社を経営している、弓削という社長からだった。
こんな状態になった俺を誘うなんて、何を企んでいるのか。
警戒心マックスで、六本木のバーに行く。無料で酒が飲めるなら、貶されようが説教されようが、どうだっていい。
自分がまだ社長だった頃に着ていた黒ジャケット姿で、金のネックレスと日焼け姿が特徴的な弓削社長の前に顔を出した。
「車屋君、まだ三十代でしょ? 俺なんか四十になっちゃったからさー、あとはここから堕ちていくだけだよ」
「俺なんか、もう死んだも同然なんで」
「まだまだこれからでしょー?」
励ましているつもりなのか? 弓削社長の言葉が嫌みに感じる。
堕ちていく想像ができないほど、弓削社長は経営が順調だった。
腑に落ちない顔で、シャンパングラスに波々注がれたスパークリングワインを一気飲みする。
「っていうかさ……車屋君、本当にこの先どうするの?」
「……正直何も考えられなくて」
「じゃあさ、動画配信者にでもなってみれば?」
弓削社長は小さなガラスの小皿に収まっていたアーモンドフィッシュを掴みながら、やや本気な表情でそう言った。
「動画配信者……ですか?」
「ここまで来たら、一攫千金狙っちゃおうよ。もう失うものもないでしょ」
確かに、俺は仕事ばっかりやってきたせいで未だに独り身だし、この先普通に働く気力もない。
一攫千金か……俺の性分には合っているけど、果たして動画配信者は儲かるのか。
「経営で失敗した経験を動画で伝えればいいんだよ。やってみない?」
「え、弓削さん何かしてくれるんですか?」
「もちろん! 僕ねぇ、動画配信者のためのコンサル始めたんだ」
「コンサル?」
最初のコメントを投稿しよう!