イノチガケ

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車屋(くるまや)君さー、この先どうするの?」  知り合いの社長から飲みの誘い。ウェブ広告の会社を経営している、弓削(ゆげ)という社長からだった。  こんな状態になった俺を誘うなんて、何を企んでいるのか。  警戒心マックスで、六本木のバーに行く。無料で酒が飲めるなら、貶されようが説教されようが、どうだっていい。  自分がまだ社長だった頃に着ていた黒ジャケット姿で、金のネックレスと日焼け姿が特徴的な弓削社長の前に顔を出した。 「車屋君、まだ三十代でしょ? 俺なんか四十になっちゃったからさー、あとはここから堕ちていくだけだよ」 「俺なんか、もう死んだも同然なんで」 「まだまだこれからでしょー?」  励ましているつもりなのか? 弓削社長の言葉が嫌みに感じる。  堕ちていく想像ができないほど、弓削社長は経営が順調だった。  腑に落ちない顔で、シャンパングラスに波々注がれたスパークリングワインを一気飲みする。 「っていうかさ……車屋君、本当にこの先どうするの?」 「……正直何も考えられなくて」 「じゃあさ、動画配信者にでもなってみれば?」  弓削社長は小さなガラスの小皿に収まっていたアーモンドフィッシュを掴みながら、やや本気な表情でそう言った。 「動画配信者……ですか?」 「ここまで来たら、一攫千金狙っちゃおうよ。もう失うものもないでしょ」  確かに、俺は仕事ばっかりやってきたせいで未だに独り身だし、この先普通に働く気力もない。  一攫千金か……俺の性分には合っているけど、果たして動画配信者は儲かるのか。 「経営で失敗した経験を動画で伝えればいいんだよ。やってみない?」 「え、弓削さん何かしてくれるんですか?」 「もちろん! 僕ねぇ、動画配信者のためのコンサル始めたんだ」 「コンサル?」
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