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俺はすぐに動画をアップした。
簡単なテロップを入れたり、たとえ低クオリティな編集だとしても、弓削社長に見てもらうためにまずアップしないと。
弓削社長に連絡すると、すぐに返信がきた。
渋谷のカフェでランチしようという誘い。
指定された場所に行くと、弓削社長はテラス席のソファーで足を組みながら、じーっと青空を眺めていた。
「弓削社長お呼びいただいてありがとうございます」
「いいんだよ。ほら、何でも好きなもの食べて」
ランチメニュー表から、一番ボリュームがありそうなステーキピラフセットを注文した。
「車屋君仕事が早いねぇ。もう動画作っちゃって」
「勢いで作ってみました」
「若いって素晴らしいよ。でもまだ再生回数伸びないよね?」
「まだ誰にも見られてないと思います」
弓削社長はノートパソコンを取り出し、画面をこっちに向けながら説明し始めた。
俺の動画を再生しては停止してを繰り返しながら、細かくアドバイスしてくれる。
「あとはサムネイルにも拘った方がいいね。良ければウチの編集につかせようか?」
「え、でも、資金がないですし……」
「いいよそんなの。手伝うって言ったろ?」
「弓削社長の貴重なリソースを奪うわけには」
「いいから。余るほどスタッフは抱えてるんだ」
お言葉に甘えて、という言葉を口にした自分が卑しくて嫌になる。
でも、こうするしかない。これしか俺が、再起する方法はないのだから。
「投稿する時間帯、SNSを活用した宣伝、あとはトレンドを意識することだね。僕の会社からもプッシュしておくから」
こんなに良くしてくれるなんて、俺は騙されているのか。
そう勘ぐってしまっていたけど、よく考えたらこの動画が伸びて収益が入ったら、数パーセントは弓削社長に入れることになるだろう。
だから、力を入れてくれているのかもしれない。
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