1.誰にも言えないなやみごと

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1.誰にも言えないなやみごと

空気が読める、って長所みたいに言われるけれど、必ずしもいいことばかりじゃないな、って思う。 たとえば、まわりの空気を読んで、自分の意見が言えなかったり、多数派の意見に流されちゃったり、とかさ。 「それでは、これから多数決をとりたいと思います」 今日の学活の議題は、陽光祭(ようこうさい)の出し物決め。 陽光祭は、私たちが通う陽光小で、毎年1回開催されるイベント。 各クラスで出し物を決めて、当日は、いろんなクラスを回って楽しむんだ。 でも、出し物決めの時間は正直ユーウツ。 なぜかって?それはね……。 「迷路がいいと思う人」 パラパラとしか手が上がらない。 意見をだした井村(いむら)くんの左胸のあたりに、丸くて黒いが見える。 自分の意見が否定されたみたいで、悲しい気持ちになってるのかな? なのに、井村くんの方をちらちら見ながら、クスクス笑ってる子たちがいる。 イヤだな、こういう空気。 だから、この時間って苦手なんだ。 「お店やさんがいいと思う人」 いつもクラスの中心にいる佐藤さんがだした意見には、たくさんの子が賛成しそう。 それがなんとなくわかったから、私も手を挙げることにしたけど。 ……でもね、ホントは、迷路楽しそうって思ってたのに、手を挙げる勇気がなかっただけなの。 私、森谷(もりたに)ひかり。小学5年生。 空気を読んで、すぐ周りに合わせちゃう自分に、悩んでます。
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