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(たしかにオレは、クラスの中で浮いてる陰キャだよ。でも、だからって、それがバカにされなきゃいけない理由になるのか?……だいたい、おなじ小5なのに、誰かが誰かを見下すなんて、おかしいんだよ)
その気持ち、わかる。
同じ小学5年生なのに、なんとなくクラスの中に階級があって、クラスの中心にいる子の発言に、みんなしたがうべき、みたいな空気、私も感じたことがあるから。
クラスの中で浮くのが、階級の一番下になるのが怖くて、いつも空気を読んで、みんなの意見にあわせてきたから。
(呪ってやる。……オレをあざ笑ったヤツら全員、呪ってやる!!)
怒りが、井村くんの視界を黒く染めていく。
「……“攻”!!」
「……“護”!!」
井村くんが口から吐いた真っ黒なビームを、守神くんは光の盾で防ぎながら、一歩一歩前に進む。
「井村くん……。あの時、すごく傷ついたんだな」
少しずつ、井村くんに近づいていく。
「悔しくて、悲しくて、それでオンリョウにとりつかれて……苦しいよな」
……ああ、そうか。
守神くんは、寄りそおうとしてるんだ。
怒りの奥に隠れてる、井村くんの本当の気持ちに。
「頭の中でずっと……なにかがささやいてくるんだ」
守神くんの言葉が、心に響いたのかな?
井村くんの目の色が、少しずつ元に戻っていく。
「……呪え、恨め、憎めって。それで、どす黒い気持ちがあふれて、どうしても止められなくて……」
井村くんの表情が、悲しそうにゆがむ。
「でも……これ以上、誰かを呪うのは……もう、イヤなんだ」
「大丈夫。ぼくが今、助けるから」
守神くんは、井村くんの両手を握る。
「……“癒”」
優しい声でそう言った瞬間、暖かな光がふたりの身体を包み込む。
そして、真っ黒な井村くんの心の半分が、白に変わった。
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