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実はもうひとつ、私には誰にも言えない悩みがあるんだ。
それはね、他人の気持ちがうっすら見えちゃうこと。
理由はぜんぜんわからないんだけど、5年生になってから急に、みんなの左胸のあたりに丸いもやが見えるようになったの。
フツウの時はグレー。
楽しい、嬉しい、みたいなイイ気持ちの時は白。
逆に、さっきの井村くんみたいに、イヤな気持ちの時は黒。
その時の気持ちによって、もやの色が変わるから、みんなの心の状態がわかって、ついつい空気を読んじゃう、ってワケ。
もし、他人の気持ちが見えるなんて知られたら、きっと気持ち悪いって思われて、仲間はずれにされちゃう。
だからこのことは、みんなには絶対ナイショ。
「多数決の結果、5年3組の出し物は、お店やさんに決まりました」
教室に、みんなの拍手の音が響きわたる。
ほぼ全員の気持ちが、白とグレーな中、たったひとりだけ、夜空に浮かぶ月みたいに、優しく輝く心の持ち主がいる。
名前は、守神大智くん。
カッコよくて、勉強もスポーツも出来て、クラスのみんなに信頼されてて。
今、私がいちばん気になってる男の子なんだ。
私のうちは、“ひだまりの家”。
児童養護施設っていって、いろんな理由で親と一緒にいられない子が、18才になるまで暮らせるとこなの。
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