1.誰にも言えないなやみごと

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お父さんとお母さんは、赤ちゃんの私をここに預けた後、行方がわからなくなっちゃったんだって。 全然って言ったらウソになるけど、でも、寂しくはないよ。 中高生のお兄さん、お姉さん。 私と同じ小学生。 弟妹みたいな幼児さん。 そして、優しい先生たち。 ここで暮らしてるみんなが、私の家族だから。 「行ってらっしゃい」 「いってきまーす」 “ひだまりの家”にいる小学生は、私も入れて5人。 学校までは毎朝、一緒に登校してる。 「萌ちゃん」 「なーに?」 4年生の萌ちゃんは、いつもはとっても明るい子。 だけど、今日は表情がくらい気がする。 「大丈夫?なんか、元気なさそうな気がして……」 そう聞いたら、萌ちゃんは、いつもと同じようにニカッと笑った。 「へーきへーき、全然大丈夫だよ!」 「そっか、ならいいんだけど……」 「ふたりとも、そこで何してるの?」 「ほら、みんな待ってるから、早くいこ!」 ……うーん。 なんだか、話をはぐらかされたような感じがする。 でも、これ以上しつこく聞くのもおかしいし……。 「ひかりちゃーん。ボーッとしてると、置いてっちゃうぞー!」 「ごめーん、今いくね!」 いっけない。 このまま考えごとしてたら、ホントに遅刻しちゃう! みんなに追いつくために、私は慌てて駆け出した。
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