1.誰にも言えないなやみごと

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ひとりで行けるから、と百瀬さんの付き添いを断り、私はランドセルを背負って教室を出た。 ……なんだか、高熱が出た時みたい。 頭がくらくらして、足元もふわふわしてる。 階段踏み外さないように、ゆっくり歩かなくちゃ。 1階まで降りて、渡り廊下を通り、南校舎にある保健室に向かう。 たいした距離じゃないのに、今はめちゃめちゃ遠くに感じる。 ……ドンッ。 前をよく見ていなかったせいで、誰かにぶつかってしまった。 「あっ……ごめんなさい」 慌てて顔を上げたら、そこには凛々しい雰囲気を漂わせる、ショートカットの女の人がいた。 「私は全然平気よ」 スクールカウンセラーの、江守美月(えもりみつき)先生だ。 うちの学校にくるのは週2回なんだけど、その度、美月先生来てるよ、見に行こ、って、クラスの女の子たちがキャーキャー言ってる。 「あなたの方こそ大丈夫?……顔色が悪いようだけど」 「えっと……、今から保健室に行こうとしてたところで……」 「なら、保健室まで送っていくわ」 「えっ?あの……ひとりで大丈夫ですから……」 「いいのいいの。カウンセリングルームに行くついでだから、気にしないで」 ニコッと微笑んで、江守先生は、私を保健室まで送っていってくれた。 ……みんながキャーキャー言ってた気持ち、わかるなあ。 優しくて、爽やかで、背が高くて、まるで少女マンガに出てくる王子様みたい。
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