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ひとりで行けるから、と百瀬さんの付き添いを断り、私はランドセルを背負って教室を出た。
……なんだか、高熱が出た時みたい。
頭がくらくらして、足元もふわふわしてる。
階段踏み外さないように、ゆっくり歩かなくちゃ。
1階まで降りて、渡り廊下を通り、南校舎にある保健室に向かう。
たいした距離じゃないのに、今はめちゃめちゃ遠くに感じる。
……ドンッ。
前をよく見ていなかったせいで、誰かにぶつかってしまった。
「あっ……ごめんなさい」
慌てて顔を上げたら、そこには凛々しい雰囲気を漂わせる、ショートカットの女の人がいた。
「私は全然平気よ」
スクールカウンセラーの、江守美月先生だ。
うちの学校にくるのは週2回なんだけど、その度、美月先生来てるよ、見に行こ、って、クラスの女の子たちがキャーキャー言ってる。
「あなたの方こそ大丈夫?……顔色が悪いようだけど」
「えっと……、今から保健室に行こうとしてたところで……」
「なら、保健室まで送っていくわ」
「えっ?あの……ひとりで大丈夫ですから……」
「いいのいいの。カウンセリングルームに行くついでだから、気にしないで」
ニコッと微笑んで、江守先生は、私を保健室まで送っていってくれた。
……みんながキャーキャー言ってた気持ち、わかるなあ。
優しくて、爽やかで、背が高くて、まるで少女マンガに出てくる王子様みたい。
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