2人が本棚に入れています
本棚に追加
「井村くん。きみはオンリョウにとりつかれてるんだ」
……オンリョウ?
井村くんは、なにかにとりつかれて、おかしくなってる、ってこと?
「勝手に申し訳ないけど、その理由、見せてもらうよ」
赤い瞳でにらみつけてくる井村くんに向かって、守神くんは叫んだ。
「……“照”!!」
「それでは、これから多数決をとりたいと思います」
あれ?黒板の前に、学級委員の鈴木くんがいる。
……ってことは、この教室はうちのクラス。
しかも、昨日の学活の時間だ。
「迷路がいいと思う人」
パラパラとしか手が上がらない。
周りから、クスクス笑いが聞こえる。
(くそっ。オレの案に手が上がらないのが、そんなに面白いのかよ)
今聞こえたのは、井村くんの心の声?
じゃあ、守神くんが言ってたのは、井村くんの記憶を見せてもらうってこと?
「多数決の結果、5年3組の出し物は、お店やさんに決まりました」
みんなの拍手の音が響きわたる。
(諦めろ。佐藤の案が選ばれたのは、あいつが人気者だからなんだ)
心の声から、井村くんのやるせない気持ちが伝わってくる。
最初のコメントを投稿しよう!