2.白黒の世界

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「井村くん。きみはオンリョウにとりつかれてるんだ」 ……オンリョウ? 井村くんは、なにかにとりつかれて、おかしくなってる、ってこと? 「勝手に申し訳ないけど、その理由、見せてもらうよ」 赤い瞳でにらみつけてくる井村くんに向かって、守神くんは叫んだ。 「……“(しょう)”!!」 「それでは、これから多数決をとりたいと思います」 あれ?黒板の前に、学級委員の鈴木くんがいる。 ……ってことは、この教室はうちのクラス。 しかも、昨日の学活の時間だ。 「迷路がいいと思う人」 パラパラとしか手が上がらない。 周りから、クスクス笑いが聞こえる。 (くそっ。オレの案に手が上がらないのが、そんなに面白いのかよ) 今聞こえたのは、井村くんの心の声? じゃあ、守神くんが言ってたのは、井村くんの記憶を見せてもらうってこと? 「多数決の結果、5年3組の出し物は、お店やさんに決まりました」 みんなの拍手の音が響きわたる。 (諦めろ。佐藤の案が選ばれたのは、あいつが人気者だからなんだ) 心の声から、井村くんのやるせない気持ちが伝わってくる。
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