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トニカクカワイイ(漫画)/畑健二郎
【司】
「ほんの――1400年前の話さ」
◇
このシーンは司ちゃんが正体を告白するという、2ページぶち抜きの大ゴマで、それまでの引きも凄く良かったんですよ。そりゃあ惹かれるわって感じの納得の佳境。
同じ作者の「ハヤテのごとく」も凄く好きだったんですけれど、トニカクカワイイも凄く好きで、さっきから凄くって言葉を使いすぎだと思いますけれど、とにかく凄く良いんですよ。
性癖の話に戻りましょう。
時間ネタが好きって話がここでも関わってくるんですけれど、「時間が解決してくれる」ってドラえもんが言っていた気がするし、「時間が癒してくれる」ってナポレオンも言っていた気がしますが、時間が経っても事実は変わっていなくて捉え方が変わっただけじゃないですか。
その当時は確かに地獄のように苦しんでいて、でも、ようやく心理的には解決してくれて。喉元過ぎれば熱さを忘れるなんて言いますけれど、飲み込んだ熱さは本人にしか知り得ようがない。
でも、その苦しさを自分の中だけに押し込めて、なんでもなかったかのように、そして自嘲するように敢えて矮小な表現をする……これって激エモじゃないですか。
こういう婉曲表現というか、自分のことだけど過去を切り離して達観してみているというか、どこか他人事のように言うところもエモ。なんだろう、根源に相手を気遣っている点があるというか、相手を安心させるための嘘……とまではいかずとも、意図的な隠し表現みたいなのが好き。
何の作品か忘れてしまったけれど、というかそういうイデアなのかもしれないけれど、類似例でいえば90歳くらいのおじいちゃんが戦争について聞かれたとき、回想シーンで地獄を思い出したあと、孫には短く「さてね。昔のことだから忘れちゃったよ」って話すやつとか、散々いじめられた相手を助けて何で俺なんかを助けたんだよ、俺はお前に酷いことをたくさんしちゃったじゃないかって言われて「過ぎた話だ」と笑いかけるみたいな感じの。
やっぱり時間ネタが好きなんだな俺は。2作品目にして早くも掴めてきた。
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