第1章/プロローグー山中でー

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引渡し/その1 「えーと、2時10分か…。先方、まだみたいだね」 手早い一連の停止操作で、美香はそうしゃべり終わる前には、すでに運転席から降りてドアを閉めていた。 早えーわ、コイツ、こういう動作(笑)。 私もそれに続いて車から降り、まずは石の方の”目印”を間近で確認した。 本日の引渡し場所である目印の地蔵さんは、思ったより目立たずに佇んでいた。 次に、もう一方の目印である、杉の大木を見た。 いや、見上げてみた。 こちらは、凄い存在感だ。 高いし、でかい。 うーん…、まるで、天まで突き抜けるように伸びているわ。 真横で同じく見上げていた美香は、私より”やや”長く細い首をしゃっきりさせて、杉の木の最上部に目をやっていた。 ... 無言のままの、その”間”はけっして長くなく、15秒足らずだっと思うが、私たち二人にはめったにない”時間”だった気がしたよ。 なんでだか、そういう時間に思えたのよね…。 私たち二人はほとんど同時に首をおろし、お互いが何か喋ろと思ったその時、エンジン音がして、白い軽トラックがこちらへ向かってくる。 「あれじゃん?」 「そうだね。来たみたいだ…」 軽トラックは、私らの車の10メートルくらい手前でUターンして、それからゆっくりと、まっすぐになってからバックしてきた。 美香とはずいぶんと”違う”到着だ、ハハハ…。 そして、私たちが立っている前で、軽トラは静かに止まった。 ここからでは軽の中の”主”はよく見えないが、雰囲気は概ね、把握できた。 うん、Goodに近い。 この”主”、車のエンジンが止まっても、運転席で何か書類やら、なんやらをいじってて、なかなか降りてきません。 じらしますなぁ…(苦笑)。 「バタン!」 これまた美香とは対照的に、丁寧さが伝わるやさしいドアを閉める音が山中に響くと、ゆったりと降りてきたぞ。 バイクの”主”が…。
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