第1章/プロローグー山中でー

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引渡し/その2 「ああ…、津藤さんですよね、向井です。こんな遠くまで、ホントにすいません。」 さわやかだ! うん、まあまあだ。 年も30そこそこかな…、たぶん。 「始めまして、津藤です。それから、同行者の西條さんです」 「西條美香です。律子とは、高校の同級生でして。本日はよろしくお願いします」 今にも吹き出しそうになるのを、必死で我慢しているような顔つきで、美香は”ごあいさつ”した。 美香はわかっているのだ。 私が彼に概ね、”合格印”を出したのを。 さすがは、長い付き合いだー(笑)。 ... 「ええと…、まずは、”商品”を持ってきますね」 今度は小走りで、向井さんは軽の荷台に乗った。 続いて、手際よく”商品”を開封してから、注意深くバイクをおろし、私の前に持ってきてくれた。 わおー、私のバイクだー! しばらくの間、私はじーっと、それを眺めていたわ。 向井さんは、私が何か喋るまで黙っている…、といった様子でね。シャイだわ。 気配りも上手のようだし…。
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