プロローグ

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 釣り場に着き、仕掛けを垂らす。2本持ってきた内の片方の竿の仕掛けは1000円で買ってきたルアーだ。遠くに投げ、しゃくるような機動を繰り返す。ベタ凪の海面、さわやかな潮風、和らいだ日差しが眠気を誘った。西の空には博多の方向に向けて間隔を開けて飛ぶ複数の飛行機が見えた。水平線の向こうには「猫の島」として有名らしい相島と福岡市東区、香椎の高層マンションが見える。 「やっぱ釣れないか…」  わかりきってはいた。堤防付近にはウニが大量発生したせいで、磯焼けを起こしている。高い透明度が真っ白な砂浜と化した海底を晒していた。これではイカは産卵に来ることは出来ない。イカは早々に諦め、青イソメを着けておいたもう片方の竿に集中する。が…  時刻も18時を超えた。いい加減帰ろう。釣果は皆無。余ったイソメを全て海に放し竿を撤収してチャリを取りに向かった。ここから最寄り駅があるJR鹿児島本線福間駅までは25分程度。そこから家がある志賀島までは列車とバスを乗り継いで70分ぐらい掛かる。帰り着くのは20時過ぎだ。コレ以上粘ると明日が辛い。餌が駄目だったのかなんだったのか分析しつつ、筋肉痛で悲鳴を上げる太腿に無理を言わせてチャリを漕いだ。  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加