4話 塔の魔術師と奪われた騎士

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 フレンにはこれまでの経緯を簡単に話した。  混乱させるかもしれないが、フレン自身がそう望んだからだ。俺の話を疑うこともなく、全て受け入れた。そしてその上で共にアゼリアを懲らしめることを選んでくれた。  かなり減ってしまった魔力を供給してもらう前にローブの中に入れていたエギルをベッドの片隅へと寝かせる。人が二人寝てもまだ余りあるほどのベッドなので、大丈夫だろう。  俺の魔力が減ってしまったことと、疲れたことによりこんな騒ぎの中でも眠っているので朝までは起きないだろう。 「エギル…と言いましたか。そんなところにいたとは……。痛い思いをさせていないか心配です」 「潰していないか心配しているのか? エギルはただのうさぎではなく使い魔だから、体は頑丈だ。それに俺の魔力はこいつを決して傷つけない」  いくら防御の雷の膜を俺の周りに展開させたとしても、攻撃対象の中にエギルは入らない。 「それを聞いて安心しました。この子は主人思いの良い使い魔ですね。健気で、とてもやさしい」  フレンがやさしい目ですぴすぴと鼻を鳴らしながら寝ているエギルを見つめる。 「そうだな。健気で一途で……そこがエギルのいいところだ。俺に似なくて良かったと思う」  勇者が言うには使い魔は主人に似るという。そうだというのなら俺の性格に似ていたかもしれないのだから。  それを聞いたフレンがわずかに首を傾ける。 「似ていますよ、あなたとこの子は」 「そうか? ちっとも似ていないと思うが」 「あなたの話だと俺を取り戻すためにアゼリア様の命を聞いていたのでしょう? それが健気でなくて何だというのでしょう。あなたにそこまで思われて、元の俺が羨ましく思います」 「……お前だって、フレンだ。俺のことを覚えていなくても、心根は変わっていない」  そう告げると、嬉しそうに目元を細めた。 「あなたは健気で…一途で、そして可愛らしい。とても愛おしく思います」  唇を重ねられる。先程の荒っぽいものとは打って変わったやさしい口づけだ。魔力が流れ込んできて、力の入りにくかった体に活力が戻る。  そしてこれまで気になっていたことを尋ねる。 「その…、アゼリアとはこういうことはしていないのか?」 「していません。求められたとしても断っていましたし、あの方は自分の好みの容姿の者を傍に置いておくだけで満たされているように感じました」 「そうか……!」  イケメンというのが大好きなアゼリアだが、性的な接触を望んでいるわけではないようだ。俺は自分のものに手を出されるのが何よりも大嫌いなので、フレンがそういう意味でも無事だと分かりほっとしたところで、自分の顎を指さす。 「ここ……、顎のところに触れて欲しい。第二王子に触られてすごく嫌だった。他の者に触られるのは嫌なんだ。上書きをしてくれ」 「はい」  今度は顎に触れたまま口づけられる。角度を変えて何度も……。 「ん……」  唇が離れて行き、何気なく視線をフレンの胸元に落として、ぽこっと制服が小さく膨らんでいることに気付いた。 「それ……ペンダント、か?」  首から下げたペンダントを隠すように制服の中にしまっているが、首元から見えた鎖の色からして俺が渡した青い石のついたペンダントで間違いない。  アゼリアに操られてとっくに外されたと思っていたが、そうではなかった。  フレンが胸元から引っ張り上げて青い石の部分を手の平に乗せて見せて来た。 「持っていた経緯も何も覚えていませんでしたが……とても大切なものだと…外してはいけないものだと何故だかそう思えました。どうしてそう思ったのか、ようやく分かりました。これはあなたから渡されたものだったのですね」  大切な宝物のようにそっと石の部分を握るフレンは、やはりどこまでも俺の知るフレンだった。  頭がおかしくなるほど尻の穴に愛撫を加えられて、耐え切れずに「焦らすな……は、やく」と懇願したところで指を引き抜かれて、代わりにずぷずぷと猛り切ったものが押し入ってきた。  膝の上に抱えられて、向き合うようになった状態で下から貫かれている。 「は……ん…っ」  目の前のフレンにしがみ付いて息を詰める。  散々ほぐされたことによって後孔はやわらかくなっているが、すんなりと受け入れるにはフレンのものは大きくて圧迫感がすごい。  身の内を食い破られるようなこの最初の衝撃にはいつまで経っても慣れる気がしないが、しかしこの圧迫感を再び感じることが出来たのが嬉しくも思う。 「熱いですね……それに、とても狭い。は、もう少し……力、抜いてください」  あやすようにフレンによって頭を撫でられて、唇が合わさって舌が絡み合い、甘く吸われる。くっ付き合う舌から魔力が流れてきて必死で舐め返す。  口付けのせいか魔力のせいか……恐らく両方だろう。気持ちがよくて体から力が抜けたところで性器を一息に押し込まれた。 「ふぁ……っ」  呻き声は深い口づけに吸い取られてしまって消えてしまう。  フレンのものが全て埋まり、腰を掴まれて揺らされた。  俺のことを覚えていないフレンは、当然ながら俺の良い場所も覚えておらず、じっくりと探るような動きだった。これはこれで気持ちがいいが、少しもどかしさも感じる。今の俺はとても気が急いていて、自ら腰を動かして中の良い部分へと当てる。  フレンの性器の張り出した部分がそこに当たってビリッとした刺激を受けて、感じ入る。 「ん、くっ……」  いつの間にか口付けは解けていて、口から甘ったるい声が上がる。 「ここがあなたのいいところなんですね」  心得たとばかりにそこを幾度も擦られて、ビクビクと腰が跳ねる。 「あ、は、ぁぁ……」  記憶のないフレンだが、焦げ付くような強い視線で俺を見つめてくるところは変わらない。感じ入ってしまい口をだらしなく開けている姿は滑稽だろうに、どうしてそんなに見てくるのか。 「何で、そんなに見るん……だ、見る、な」 「それは、少し…難しいですね。感じ入って、乱れて啼くあなたが綺麗でいやらしくて目が離せません。恐らく…元の俺も、あなたが愛おしくてたまらず、こうしてずっと見ていたはず……」 「うっ……」  その視線に煽られるように中に入ったフレンのものをキュウッと締め付けてしまうのだから俺も大概だ。 「あなたは、本当に可愛らしい」  フレンが俺の乳首を甘く食んだ。そのまま胸を吸われて全身がジンジンと痺れて下半身に熱が溜まる。下からの突き上げは続いていて、俺の喉からはもうずっとすすり泣くような声しか出ていない。実際に泣いているわけじゃないのに……それしか出ないのだ。 「ここも、こんなに腫らして……お辛いでしょう」  フレンが俺の手を導いて、兆しきった自分の性器を握らされる。そこは自分の零した先走りでびしょびしょになっている。 「う、あ、何……?」 「ご自分で扱いてください」 「え、そ、んなことしたことない……」  正直に告げると、フレンがびっくりした顔をした。  自分で自分のものを弄るという知識はあったものの、フレンと交わる前の潔癖だった俺は性的なものに全く興味が無くて、自分で弄ったことはない。  フレンと体を重ねるようになってからも、やってもらうばかりだった。 「そう、なのですか。ではここを握って、まずはゆっくりと上下に動かしてみてください」  教えられた通り、ゆっくりと擦り上げる。  快感がその部分から全身に這い上がって来て、体がビクンと震える。 「う……ヤダ、怖い」  ふるふると首を横に振る。  してもらう場合はいいのだ、だけど気持ちよくておかしくなってしまうと分かっているのにそれでも自分で握り続けるというのは難しい。 「大丈夫、怖くありません。気持ちいいだけです」  手を離そうとするが許してもらえなくて、仕方なくもう一度擦る。くちゅくちゅと濡れた音が響いてそれがまた劣情を煽ってくる。 「ふ、う~~~~……っ」  握り込んだ性器を擦る度にそこがビクビクと脈をうつ。 「ここも……しっかりと弄ってくださいね」  性器の先端、蜜を零す穴を指の腹でぐりぐりと撫でまわされる。 「んあっ!!」  腰をくねらせながら身悶えする俺を満足げに見つめるフレン。  うぅ、何だか、何だか……。 「フレン、いじわる……だ。それに、何だか……すごくいやらしいぞ」  嫌だ出来ないと言っているのに、許してもらえない。それに執拗な気もする。  くすっとフレンが笑う。 「元の俺は随分と遠慮しているようですね。それはきっとあなたを怯えさせたり、嫌な思いをさせたくないのでしょう。今の俺は…あなたの記憶がないせいか、自分の欲に忠実のようです。ですが、本当に嫌がることはしたくないので……、その時は止めてください」 「べつに……いや、じゃない」  心から嫌だという訳ではなく、慣れなくて怖いだけだ。  手の動きを再開させる。  以前どんな風にフレンに触れられていたか思い出しながら擦っていく。  蜜をたっぷりまとわせて、少し強めに握って……裏側の筋の辺りを念入りに擦られていたような……。はしたない水音に比例して頭の中が気持ちいいで占められていく。 「はー…はー…、ア、ぁ」  その間も下からぐぐっと深く突き入れられて、体を揺さぶられ、ギリギリまで引き抜かれる。自重のせいか深くまで繋がり合っている気がする。後ろからと前からの刺激で、もう耐えられそうになかった。 「あ、あっ……イクぅ……っ!」  ピュッと白濁が飛ばしながら達すると、体から力が抜けた。ふにゃっとしたところを抱き留められる。目の前の男の胸に頬を擦りつけて何度も大きく息を吐く。すると髪の毛の辺りに何かが触れて、唇を落とされたことを知る。 「お上手でしたよ。俺も……いいですか?」  まだ達してないフレンのものは俺の中で硬度を保ったままだ。体がくたっとなりながらもこくりと頷いた。抱き締められたまま体勢を替えられて、ベッドに組み敷かれる。  挿入の角度が変わったことで再び感じ入ってしまい、目を閉じてふるふると震えた。 「どこもかしこも敏感で…素直なんですね」  赤く色づいて膨らんだ胸の先をフレンが捏ね始める。先程達したことによって、今そこを触れられるのは少し苦しい。  軽く摘ままれただけでビクビクと何度も腰が跳ねる。 「う、やぁ……っ、も、いい……も、欲しいぃ」 「魔力ですね、今、お渡しします」 「魔力、だけじゃなくて……フレンがほしい…、奥、突いてっ……いっぱい」 「……っ、そんなに煽らないでください……っ」  フレンの表情から余裕が消えて、ガツガツと叩きつけるように腰を打ち付けられる。俺の内部はすっかりとぬかるんで柔らかくなって、ぐちゅ、ぶちゅっ、と激しい抽挿の度に濡れた音が響き渡る。  奥をゴンゴンされると深い痺れが走って自然と背がしなっていく。 「あ、は、きもちイイ……ふぁ……」  舌が回らなくなって、もはや自分でも何を言っているのか分からなくなってくる。ふにゃふにゃ呻いていると中に埋まったままのものが質量を増した。 「んん、おっきい……も、入んない……」  息を呑み込む音がフレンの喉奥から響いて、入らないと首を振っているのに奥まで陰茎がぐぐっと突きこまれた。 「う、あ、あ、アぁ……っ」  やがて腹の奥に放たれた精を飲み干したところで目の前が真っ白になった。    ***  行為の途中で気絶するように眠ってしまったのか、ベッドの上を何かが跳ね回る衝撃で目を覚ました。日はすっかり昇っている。  やはりフレンはフレンだったので、俺の体は綺麗に清められていてきっちりとローブが着せられていた。弾け飛んだボタンも元通りになっている。  跳ね回っていたものの正体はエギルで、興奮したようにピョンピョンと動き回っていた。 「フレンさま。フレンさまがいるです!」  朝になって目を覚ましたエギルはベッドに居るフレンを見つけて、戻って来てくれたと思ったのだろう。そこでこの大騒ぎが起きたというわけだ。  興奮しすぎてハッハッと息切れしている。酸欠で倒れてしまいそうな勢いだ。  すでに起きて身を起こしていたフレンは困ったように眉を下げた。 「すまない……。俺はまだ記憶を完全に取り戻せておらず、君の知るフレンではないんだ」  その言葉にエギルは跳ねていた脚を止めて、不思議そうに首をコテンと傾げる。 「いつものやさしいフレンさまに見えるです。もうちくちくしてないです。エーティアさまが嬉しそうにしているから、ぼくの知らないフレンさまじゃないです!」  使い魔と主人の関係だからか、俺の感情はエギルに筒抜けのようだ。何だか決まりが悪くてうろうろと視線をさ迷わせた。 「そうか、ありがとう。魔術にかかっていたとはいえ、先日は君にも酷いことを言ってしまってすまなかった」 「ぼく、もう気にしてないです! フレンさまが居てくれて嬉しいです」 「いい子だ」  エギルはいそいそとフレンの膝の上によじ登り、その背をフレンが撫でる。「えへへ」とエギルが嬉しそうにニコニコした。
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