結局エアフォースワン帰国

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結局エアフォースワン帰国

 莉里ー。シートベルト付けろよー。  プライベートCAである三鷹さんもいたが、勘解由小路は率先して娘の安全確保を行っていた。 「轟さん。往復させて済まんが、家に帰るぞ?」  コックピットが妙にアゲアゲな空気を放ち、勘解由小路家プライベートジェットは、無事ベルリンの空に舞い上がっていた。  いつものように、ワインを一本飲み干した勘解由小路は、左手で真琴の手を繋ぎ、右手で莉里の手を繋いでいた。 「碧の奴、ついイライラしたみたいで、やっちゃったぽいな?まあ、祓魔課から俺達をシャットアウトしたって、仕方ないだろうに」 「それについちゃ、莉里もごめんなのよさ。姉ちゃん怒らせたのは」 「いや、そうじゃないんだ。問題は、流紫降にある。流紫降が、真帆坊と一緒で舞い上がっちゃってるのが、1番の問題だった。双子の姉弟に、けったいなトラブルが起きていたんだ。双子の弟に彼女が出来て、イラッてしちゃったってだけだ。実際、起こるべくして起こったことで。双子の精神の緊密性ってのを、もう少し考慮に入れるべきだったと反省している訳だ。まあ、これ内緒な?」  真琴は、思わず納得していた。こんな話、課長には出来ない。 「まあ実は、それだけでもない。虫が大量に湧いたって話な?あれの犯人は明らかだった。あれだ、ゾーイの奴だ」  ギュッと、真琴は夫の左手を握り潰していた。 「今でも覚えている。確か、大学で、ゾーイを陰気な眼鏡女とか揶揄していた女の口に、ゾーイはレッドローチのボールを突っ込んだ事件があった。ついでにまき散らされたレッドローチは、本人の言では40万匹いたそうだ。要するにあれだ。虫が増えすぎて、母ちゃんがつい庭に虫を捨てたら大量繁殖したってだけの話だ。しかも、虫を増やしたの母ちゃん本人でもあった訳だ。虫が増えたら、飼う爬虫類を増やせばいいって頭で、ゾーイは数百匹のヒョウモントカゲモドキを飼っていた。ブラックパールとか増やしてたな。あいつ」  ゾーイ。真琴は、静かに呟いた。  あの女、私の降魔さんを、同時に私を傷つけた女。 「解ります。虫は、霊力回復の為の餌――だったのですね?」 「ああ。あいつの側に、E缶(鳴神)がいなかったから起きたことだった。あのガキを生んで、ゾーイは相当弱ってたんだろう。霊力回復を虫で計り、更には爬虫類妖魅と適当に(つが)って子供を生みまくっているようだ。つまり、これから起きる展開も読める。純粋な、ゾーイの子供と祓魔課のバトル展開になる。半分、それこそが碧が望んでいることでもある。思った以上に喧嘩っ早い子になっちゃったな。碧は」 「ならば、お任せ下さい。あの女を滅するのは、私の義務ですから」  静かに、真琴は闘志を燃やしていた。
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