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屁えこいたのはドイツ
警察庁祓魔課の残留 新課長の台頭と悲しい兄妹編新装版
9月のドイツは、もう既に肌寒く感じた。
勘解由小路が、ベルギー王室からもらったというこの古い城は、ドイツというよりスイス国境に近かった。
晴天ではあるが、風はスイスを感じる。
千切れた雲が、いいスピードで東に流れていった。
この城、かのアドルフ・ヒトラーが、滞在していたという逸話も残っているらしい。
つい昨日、魔女に関わる奇妙な事件に遭遇した島原は、勘解由小路の劇的な真相究明を経て、今は、城の上階のバルコニーに設置した、リクライニングチェアーに寝そべり、ドイツの冷風を感じてもいた。
「どうせしょぼい城だと思ってたが、こうして来るとのんびりしてていいな?国賓の島原」
こいつの言葉通り、稲荷山トキの口利きで、島原は異様な厚待遇で、こうしてやってこれたのだったが。
「今回は仕方ないのだが、俺不在で、祓魔課は大丈夫なのか?」
「ロクに休みも取らんと泊まり込んでたじゃないか。文句は言わせん。存分に休めよ。ワイン飲むか?ベルギーの奴等が用意したいいワインだぞ?」
「旅先で早速酒か。昔を思い出すな。だがもらおう」
おっさん達が、盃を酌み交わしていると、城の入口でけったいな騒ぎがあった。
「流石にアッタマ来たぞお前は!」
「何を怒ってんのよさ?屁こき姉ちゃん」
「何だ?何の騒ぎだ?」
「あああ。しょうもない喧嘩してるなあいつ等。あああれだ。うっかり屁をこいた碧を、莉里が笑いものにしてる。おーい!やめろ!お前達!そういうネタはだな?!引っ張れば引っ張るほど、笑った方が損するぞ?」
「ごめんなのよさ!パパ!もうブバってやった姉ちゃん笑ったりなんかしないのよさ!屁こきネタ擦ったら確かに自爆するのさ!」
「語るに落ちてるぞお前はあああああああ!だったら!生まれた頃のお前の尻写真バラ撒くからな?!」
「ぎゃあああああ!パパああああああああ!屁こきに脅迫されれるのよさ!」
「あらあら、降魔さんは大層お疲れだというのに」
極小マイクロビキニに、薄手のカーディアンを羽織った。エロ嫁が現れた。
「みっともない喧嘩はおやめなさい。パパが困ってますよ?であれば、パパの意を汲んだママは、そうせざるを得ません。莉里ちゃん、256回です」
「絶対死ぬわああああああああ!ママごめんなしゃい!もう屁こき姉ちゃんの件は、永遠に忘れるのよさ!!」
この時点で、擦りすぎにもほどがあった。
「ああああああああ!!けったくそ悪いわ!こんなクソ城いられるかあああああああああ!!轟さんヘリ出せ!帰る!」
碧は1人で帰っちゃった。
「どうする?勘解由小路」
「帰っちゃったもんは仕方ない、家に帰ったのなら、まあ問題ない。基本ホームアローンが通用しないのがうちだ。荷物持ちしてた静也も帰ったし、まあ問題ない。それより、1人きりで真帆坊に対応せにゃならん流紫降のど緊張ぶりの方が心配だ。ほら、夜鷹が集まってる」
「ダンウィッチか何かかお前の子は。それに――うお?!志保!その格好は何だ?!寒いだろうに!」
「陽を浴びてれば平気よ?雪次君、お昼バーベキューでいい?」
「嫁達は、日向でバスキング中らしいな。まあいい。碧のことは気にするな」
「ならまあ!しかし、いい風が吹いているな」
おっさん達は、結構なバカンスを満喫していたという。
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