神社

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「だめ?」 男の子の問いかけと同時に私の口が反応した。 「全然だめじゃないよ!」 私の返事に男の子はにっこり笑い「よかった」と言うと、私の手を取り境内まで一緒に駆け上がった。 男の子の手はふんわりして柔らかくて冷たい。私は階段を駆け上がりながら男の子の顔を見上げながら、初めて人を見て綺麗と思った。 私達は夕焼けが落ちるまでの短い時間、本殿の奥にある大きな平たい岩からどちらが遠くに飛べるかを競う遊びをした。 皆んなこの岩をペタンコ岩と呼んでいてこの遊びを「ペタンコ飛び競争」と名付けて仲間の中では結構人気のある遊びだった。 男の子は下手くそで、毎回私が勝ってしまう。男の子は負けても「上手だね」と笑顔で私を褒めた。 初めは嬉しかったその言葉も、少しずつ悲しく聞こえてくる。だって私なら絶対悔しいと思うから、きっと男の子も悔しかったり悲しかったりしてると思った。 「あのね、遠くを見て飛ぶんだよ。そうすると絶対今より遠くに飛べるから」 そう言った後すぐに夕焼けチャイムが赤い空から流れて来た。5時になると鳴るこの夕焼けチャイムは家に帰る合図と同じだった。 「あ、帰らなきゃ。次に会った時にちゃんと教えてあげるからね、また遊ぼうね」 私はその場駆け足で早口で男の子に言うとバイバイと手を振って家へと走って帰った。 帰り道、私の胸がぱちぱちと音を立てていた。メロンソーダみたいに甘くて微炭酸的な刺激を感じていた。
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