天気雨

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天気雨

突然冷たいものが顔に落ちて、私は空を見上げた。 空は青色が広がり太陽の光が眩しい位だ。 そんな空の表情に似合わない雨がどこに身を潜めていたのか驚くほど勢いよく降ってきた。 いきなりの大粒の雨に街にいた人々は足速になり始め、雨の勢いが強くなると比例して皆駆け足で雨宿りする場所を探し始める。 私も慌てて近くの大型書店に滑り込む様に入った。最初は店先で止むのを待つつもりだったのに、同じ事を考えている人は多く次から次へと人が店へ流れ込んで来て、私は店の奥へと押し込まれていった。 青空とアンバランスの雨は買ったばかりの私のパンプスの中にまで染み込んでいて、その湿った感触が耐えられず人の目を気にしながら靴を脱いだり履いたりを繰り返していた。 天気雨は嫌いだ。 折角小さな胸に押し込んだ想いを蘇らせる。 ふと見上げた棚にずっと探していた本を見つけた。 中学の時に途中までしか読まなかった小説。捨てた覚えはないのに何処を探しても見つからず、数年前から無性に読みたくてずっと探していたのにネットでも見つけられなかったのに。 その本に手を伸ばすと、反対側からも黒くてがっしりした手が伸びてきてお互いの指先がかすった。 私の指先をかすった黒い手を辿ると男性と目が合った。 なんて真っ黒な瞳なんだろう。 私は初めて会った彼の瞳に吸い込まれていった。全く目を逸らす事が出来ない。 きっとこの人だ。 彼は、きっと赤い糸の相手なんだと私の第六感が囁く。 「ふうちゃん約束するよ」 その言葉が蘇っていた。
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