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目的地に到着したのか、トラックが止まった。ドアが開き、荷台に歩いてくる一人分の足音が聞こえる。
荷台の扉のロックを外す音。
桐生と北条は扉から一番離れた場所に座り、身構えた。壁についた両掌にじっとりと汗がにじむ。
扉が軋みながらゆっくり開かれる。ハイビームの光が荷台の内部を照らしだす。
桐生は目を細めた。扉の前に立っている男のシルエットが見えた。逆光で顔は見えないが、体型からして武藤ではない。
眼鏡男は桐生たちの拘束が解かれていることに気がつくと、体をこわばらせた。
「今だ!」北条が叫ぶ。
と、同時にセダンがアクセルをふかし、ものすごい勢いで荷台に突進してきた。
桐生は衝撃に備えて全身に力をこめる。
眼鏡男が慌てて荷台に逃げ込んできたのとほぼ同時に、セダンはトラックに激突した。
轟音と共に荷台の内部が揺れる。
身構えてはいたが、あまりの衝撃に思わず口から呻き声が漏れる。
もんどり打った眼鏡男がこちらまで転がってくる。ゴン、と眼鏡男が頭をぶつける鈍い音が響いた。
桐生は素早く立ちあがりセダンの方に走る。
ハンマー男が運転席から出てこようとドアに手をかける。が、開かない。北条が遠隔でドアをロックしているからだ。
運転席側のサイドウインドウがひとりでに開きはじめる。ハンマー男がぎょっと目を見開く。
桐生はサイドウインドウに両腕を突っ込んで、ハンマー男を引きずり出した。
暴れるハンマー男を地面に放り投げる。顔面に蹴りを入れるとおとなしくなった。
「北条!」桐生が叫ぶ。
ロックが解除されたドアを開き、運転席に滑りこむ。
赤ん坊を抱えた北条も助手席に乗り込んできた。
すぐさまセダンをUターンさせ、発進させる。
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