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その日から人形は、山本家のリビングの棚に飾られるようになった。
洋風の家具で揃えた瀟洒なリビングに、薄汚れた市松人形は実に不釣り合いで、視界に入るたびにげんなりした気分になってしまい、あんな不気味な人形を置いておく父の神経が理解できなかった。
それに、何よりも嫌だったのが視線である。
あの人形が家に来てからというもの、家の中にいるとき、いつも誰かに見られているような気がするのだ。リビング、自室、洗面所など場所は関係なく、じっとりした視線が身体にまとわりついてくる。周囲を見回しても、自分のほかに誰もいない。だからこそ余計に気味が悪いのだ。
あの人形、捨ててくれないかな。そんなことを思っていた矢先にその出来事は起こった。
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