第27話 閑話③(別視点)

1/1
前へ
/71ページ
次へ

第27話 閑話③(別視点)

 黄金の巨木の前に立つファナードの女神は、その場に崩れ落ちるように倒れた。  水面に大きな波紋が生まれ、広がり、消えていく。 「……あなたはいつもそう。真実を知っても、決して諦めることはない。いつも……いつも、同じ言葉を私に返すのですね……」  彼女は巨木を見上げた。不自然に広がるたくさんの枝の中に、先端が黒くなっている物が何本かある。  布で覆われた瞳が映す何かに向かって、手を伸ばし――ギュッと強く握った。 「どうか辿り着いてください……今度こそ」  祈るような声が僅かに空気を震わせ、消えていった。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加