8人が本棚に入れています
本棚に追加
日差し
ただ静寂が辺りを包み込み悠久の時が流れている、全ての時が止まっているのではないかと思わず錯覚してしまう。
かさりかさりと足元に微かに揺れる青葉を踏みしめながら、歩を進める。
とても不思議であった。風はない、ひんやりとした外気が肌を撫で上げていく、そしてどこかピリリッとした独特な空気感。
高い木々が立ち並び、腕を大きく広げた深緑たちが程良い光を遮りながらも、キラキラと光落ちてくる木洩れ日はとても幻想的ですらあった。
――別世界だ……美しい……
ふと視線を足元に落とすと、謎の黒い、かなり大きな固まり。石のような、どことなく鉄素材に似た謎の物質が点在していた。
「なんだろう?少し赤っぽい、錆のような?でもつるつるしている。へぇ……面白いなぁ……」
初めて見る物質に目を奪われ、暫し観察をしてみたがよく解らず、先へと進む。
橋代わりのような平たい物体の上を歩き、見えてきたのは先程とは比べ物にもならない、巨大な岩のような塊が鎮座していた。同じ物質ではあるが凸凹としていて、空気穴まである。少し触ると痛そうなザラつきがある。
不思議なことに、岩のような固い物体から植物が生えていた。
「うーん?……どうなっているんだろう?」
程なくすると、辺り一面に光が溢れ返る。そこは行き止まりで崖になっていた。しかし私を迎えたのは、眼前に拡がるのは美しい湖。
ゆらりゆらりと揺れる水面は、きらきらと光を弾き返す。その姿をただ私は失われないように、スケッチブックへと描き写していく。
時が経つのを忘れて過ごしたあとの帰り道、森を歩いていると、ふと嫌な予感がした。
「えっ!?もしかして……ここって······ 樹海?……あの黒いの溶岩?」
何故かこの私の身を包む寒さが、 さらに一気に増した……。
最初のコメントを投稿しよう!