日差し

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日差し

ただ静寂が辺りを包み込み悠久の時が流れている、全ての時が止まっているのではないかと思わず錯覚してしまう。 かさりかさりと足元に微かに揺れる青葉を踏みしめながら、歩を進める。 とても不思議であった。風はない、ひんやりとした外気が肌を撫で上げていく、そしてどこかピリリッとした独特な空気感。 高い木々が立ち並び、腕を大きく広げた深緑たちが程良い光を遮りながらも、キラキラと光落ちてくる木洩れ日はとても幻想的ですらあった。 ――別世界だ……美しい…… ふと視線を足元に落とすと、謎の黒い、かなり大きな固まり。石のような、どことなく鉄素材に似た謎の物質が点在していた。 「なんだろう?少し赤っぽい、錆のような?でもつるつるしている。へぇ……面白いなぁ……」 初めて見る物質に目を奪われ、(しば)し観察をしてみたがよく解らず、先へと進む。 橋代わりのような平たい物体の上を歩き、見えてきたのは先程とは比べ物にもならない、巨大な岩のような塊が鎮座していた。同じ物質ではあるが凸凹としていて、空気穴まである。少し触ると痛そうなザラつきがある。 不思議なことに、岩のような固い物体から植物が生えていた。 「うーん?……どうなっているんだろう?」 程なくすると、辺り一面に光が(あふ)れ返る。そこは行き止まりで崖になっていた。しかし私を迎えたのは、眼前に拡がるのは美しい湖。 ゆらりゆらりと揺れる水面(みなも)は、きらきらと光を弾き返す。その姿をただ私は失われないように、スケッチブックへと(えが)き写していく。 時が経つのを忘れて過ごしたあとの帰り道、森を歩いていると、ふと嫌な予感がした。 「えっ!?もしかして……ここって······ 樹海?……あの黒いの溶岩?」 何故かこの私の身を包む寒さが、 さらに一気に増した……。
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