つまらないことでも

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つまらないことでも

「あなたの人生です、好きなように生きていいのですよ」 そう言われると、困ってしまう。 私はアイデンティティがない、それは出口のない迷路を彷徨(さまよ)っているようなもの。 「では、好きなものはありますか?」 どの程度のことなのか? 好きなものはあるが、ライフワークと呼べない。ただ私はその世界に潜って、そこの住人でいたいのかもしれない。 「充実した時間を過ごせていますね」 本当にそうだろうか? 自分にとって価値がある時間は他者にとって興味もなく、無駄であるかもしれない。 「あなたの人生ですよ。あなた以外のことは一度忘れましょう」 忘れていいのか……考えたことがなかった……。 大したことではない、でも私にとっては大切なこと。このまま守り続けて育てられるだろうか――。 「その気持ちを忘れないで下さいね。いまのあなたはとても素敵ですよ」 私の心の何かが溶け出す、それとと同時に頬に伝うものを感じた。
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