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一件のメッセージ
静かな部屋には、ノートにシャープペンを走らせる音が響く。
そっと、課題の残りのページをペラペラと捲る。
「はぁ……、先は長いなぁ……」
ぐいっと大きく両腕を上に伸ばし、椅子に仰け反った。
凝り固まった体が、少しは解れるのを感じる。
「音楽でも流そうかな?」
手に取ったペットボトルの蓋を外しながら、集中力の切れた頭をどうしようかと考えようとしていた時だった。
教科書の隣に大人しくしていたはずのスマホがブブッと小刻みに揺れた。
「誰だろう?」
手に取ったスマホの画面には、メッセージが届いた通知が表示されている。特に誰かと表示はされていない、でも私にとっては見慣れた光景。
それは誰とメッセージをしているか詮索されたくないから――。この主張を親から勝ち取った証でもあった。
画面が変わり、通知が来た相手が表示される。
『ただいま。ねぇ、いまなにしているの?はやくキミに会いたいよ』
私は思わず叫びそうになる声を抑えるため、必死に口許を両手で覆う。
興奮しすぎて顔が熱くなっていくのが、自分でもわかった。
「明日、会えるからね!私、頑張るよ!待っていてね!」
私は思わず拳まで握りしめて、高らかに宣言する。
明日、ライブで会える推しのために、私は再び課題へ向かった。
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