神様だけが知っている

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神様だけが知っている

「さて皆さん、今回の課題は保護者の方々にも御覧になって頂きます。今まで習ってきたことの総復習となります、日頃の成果が問われますので頑張ってくださいね。」 凛とした女性教師の声が、室内に響き渡る。スラリとした体躯の美しすぎる容姿、身に纏う薄い白い衣は不思議な煌めきを発していた。 部屋には女性と同じ様な衣を身に着けた少年少女達が10人ほど椅子に座り、自分の机の上に乗せられた透明な四角い箱の中にある浮遊する物体を真剣に観察している。その物体の形は様々な形をしていたが、基本的には球体、丸い円盤、四角い平面等が多く見られた。 「先生、質問をしても宜しいでしょうか?」 挙手をした困り顔の少年の側へ、先生と呼ばれた女性はスッと音もなく移動をする。 「あらあら、この状態を繰り返しているのかしら?」 優しそうな微笑みを浮かべながら、生徒の箱の中を冷静に凝視していた。 「はい。気圧、地殻の気候調整も適宜行いました。しかし、どうしても汚染と衝突をおこなってしまいます。こうなると現状維持は難しいのでしょうか?」 生徒は箱の球体をじっと覗き込みながら、溜息混じりに言葉を発した。 「人口調整機能により、ある程度の維持力はありますが、保っても1000年は難しいでしょうね。どうしますか?一度練り直ししましょうか?」 「はい。完璧に仕上げたものを父上に見せたいので」 安堵したのか嬉しそうに先生を見上げた少年は、満面の笑みを浮かべていた。 微笑み合う2人の姿は、この世とは思えない神々しい輝きを感じる程である――。
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