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その癖に、俺から離れることができない。高校時代も、嫌味を言うためだけに俺の周りをうろついていた。俺の卒業を機に一度は距離を取ろうとした時期もあったけれども、数か月後に試しにこちらからメッセージを送ったら、結局再びだらだらと連絡を取り合う体たらく。
剰え、「うちの大学に来たら?」なんて何気なく言ったら、本当に地元を離れて同じ大学に進学してきて、こうして部屋に俺を入れるほど。
あまりにも稚拙で痛々しいムーブ。健気な強がりは結果的に自分の首を絞めている。そんな永司くんが、俺は愛おしくてたまらなかった。彼が俺のことで焦ったり動揺したりする姿を見ると、大丈夫だよと慰めてあげたい庇護欲ともっと刺激して傷つけてやりたい加虐心の両方が突き動かされて、密かに悶える胸の内だ。
ただ、俺の抱えるどちらの衝動も永司くんには届かない。永司くんは自分を守るために、ひたすら自分だけの世界で生きている。決して覆ることのない思い込みの強さも、その表れだ。
だから、俺には彼を癒すことも傷つけることも叶わない。
その現実が見えていながら直面したくなくて、俺は全ての言葉を飲み込んだ。
そして、残る僅かな酒を一気に喉の奥へ注ぎ込んで、意味もなく笑いながら二本目の缶を開けるのだった。
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