1-2 男たちにもワケがある

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「自分のシフト日以外は手を出さない。そういう決まりではなかったのか」  重みのある低い声が聞こえたのと同時に、サヴィトリは喉が詰まるのを感じた。服の襟首を掴まれ、カイラシュから引きはがされたのだとわかったのは、別の男の腕に捕えられてからだった。 「ヴィクラム殿……!」  これ以上ないくらい怒りで顔を歪めたカイラシュが、サヴィトリを捕えている人物の名を呼ぶ。彼も円卓に着いていたうちの一人だ。 「俺は三番目だ。それまで、補佐官殿やイェル術士長になびいてくれるなよ」  背中側から覆いかぶさるようにサヴィトリを抱きしめているヴィクラムは、サヴィトリのおとがいに手を添えた。親指の腹で顎を押し上げる。  夜空の色をした瞳と目が合った。  サヴィトリはとっさに視線を逸らす。  ヴィクラムとの付き合いは一年ほどになるが、いまだに気後れしてしまう。カイラシュとは真逆の、男性的で精悍な容貌や、燃えるような赤い髪には圧があった。
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