4-2 東国の生物兵器

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「東国の生物兵器?」  サヴィトリは首をかしげる。初めて耳にする話だった。 「東国にのみ生息している巨大生物をベースに作った合成獣のことです。基本的に単体で行動し、通常の魔物よりも凶暴性が高く、優先して人間を襲う。異常な再生能力を有しているため、倒すにはヴィクラムがやったように一撃で首を落とすか、心臓をえぐり出す必要があります」  ヨイチがわかりやすく説明してくれた。 (東国か。もしかするとこの生物兵器も私に対する刺客なのかな)  東国というのはこの大陸にある列強三国のうちの一つ、ダタラ帝国を指す。国境沿いに長城を築き、出入国を厳しく制限しているため、どんな国であるのか正確なところはわからない。最盛期は大陸の半分を支配しており、かつての威光を取り戻すため各国に対し破壊工作や内乱の煽動(せんどう)をしているとも聞く。 (仮に東国が暗殺や襲撃の大元であるなら、叩き潰すのは骨が折れそうだ)  サヴィトリは出そうになったため息を飲み込み、巨熊の死骸に近寄った。  今いる国有林は、王都と国境のちょうど中間にある。サヴィトリがこの森に来ると知っていて放たれたのか、それともただの偶然なのか。どちらにせよ、この巨熊が本当に東国の生物兵器であるなら由々しき事態だ。
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