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4-3 裏切者
サヴィトリが足をばたつかせても、肩や背中を叩いてみても、ヴィクラムは一切動じない。どこぞへと歩き続ける。
「そろそろ降ろすか、どこに行くか教えてくれないか」
自分の行為が無駄であると悟ったサヴィトリは物理的抵抗をやめ、素直に尋ねてみることにした。
「邪魔が入らず二人きりになれる場所なら、どこでもいいんだがな」
「ああ、さっきの裏切者の話をしないといけないからか」
「いや。さっきの続きをするなら、人も魔物もいない方がいいだろう。他人に見られたいという趣味があるなら、やぶさかではないが」
ヴィクラムはサヴィトリの身体を抱えなおす。サヴィトリの膝裏に手を入れて抱き上げた。
「続き? 趣味? え?」
荷物のように振り回され、サヴィトリの思考が数秒遅れる。
気が付くと、やや見下ろした位置にヴィクラムの顔があった。
腰から下はヴィクラムの腕で支えられ、安定している。逆に上半身は、ほんの少しの体重移動でぐらついてしまう。
サヴィトリが手の置き場所に迷っていると、背中をぐっと押された。身体が前にかたむき、自然とヴィクラムの肩に手を置く形にさせられる。
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