4-3 裏切者

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「補佐官殿に言われたことを忘れたのか。恋人の振りをすると思っているのは、お前とナーレンダだけ。俺は好きにやらせてもらう」  背骨を一つ一つ確かめていくように、ヴィクラムの手がサヴィトリの背を撫でおろす。 「き、っ……! ヴィクラム! 私は、真面目に聞いている!」  サヴィトリは悲鳴を噛み殺し、声を荒げた。  ヴィクラムは硬派で誠実そうな見た目とは裏腹に、時と場所を選ばず平気でこういうことをしてくるタイプだ。カイラシュも接触は多いが、ヴィクラムほど真に迫ったことはしてこない。  もっとも、「同じ女は二度抱かない」だとか「巨乳が好きだ」とか公言するような男だ。几帳面に撫でつけられた髪型とは違い、きっちりとした人間でないことはサヴィトリも充分に理解している。 「そう怒るな。ただの冗談だ」  ヴィクラムはいかにも人が悪そうな含み笑いをする。 「冗談はあとにしてくれないか! ヴィクラムのは本気と冗談の区別がつかない!」 「あとでなら、していいんだな」  ヴィクラムは意味ありげに目を細めた。
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