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「主語をちゃんと言え! 何をするというんだ!」
「大丈夫だ。お前に変なことをするな、と三人から言い含められている。変なことはしない」
「だから具体的に言わないか! 変じゃない何をするつもりだ!」
「俺の口から言わせたいのか」
「妙な言い方をしないでくれ! 私はごく普通のことを聞いている!」
「裏切者は俺の隊の者だった」
突然まともな話に戻され、サヴィトリは継ぐ言葉に窮する。
「三番隊の中に、あの生物兵器を持ち込んだ者がいる」
ほんの少しだけ、ヴィクラムの声が沈んだようにサヴィトリには聞こえた。
「それが誰かは、もうわかっているのか」
「今ごろヨイチが取り調べをしているところだ。五番隊は羅刹全体の監察も担っている」
(カイが五番隊を護衛につけたのは、もしかして内通者がいるとわかっていたから? そもそもこの急な討伐任務自体が罠で、裏切者をあぶり出すためにカイが仕組んだ?)
サヴィトリの頭の中に、怜悧で表情のないカイラシュの姿が浮かぶ。
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