4-3 裏切者

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「そうでもない。生物兵器にうかつに近寄られては事だ。首を落としたとはいえ、あれには再生能力がある。それに、四人の男を(はべ)らせ『色に惚けている』はずの陽光姫は、あのような深刻な顔をして死骸には近寄らないだろう。裏切者がいる中でお前を止めるには、あれが一番手っ取り早かった。簡単な事情説明もできたしな」  ヴィクラムの発言に、サヴィトリは目をしばたたく。  戦闘時を除き、ヴィクラムに人並みの判断力があるとは思っていなかった。彼に対する評価を改める必要がある。 「ヴィクラムにしては色々と考えているな」 「いや、俺は何も考えていない」 「は?」 「今のはヨイチの指示だ。さっき、お前に説明する用のメモをもらった」  ヴィクラムは手のひら大の紙をサヴィトリの顔の前に差し出した。紙には、「サヴィトリ殿下に説明すべき最低限のこと」とその説明内容が箇条書きでわかりやすく書かれている。  評価を改める必要はなさそうだ。むしろ、あんなわけのわからない口論をしている間にヴィクラムに意図を伝え、こんなメモまで作ったヨイチの評価が上がる。
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