4-3 裏切者

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「ヴィクラムは、私に構っていていいのか?」  サヴィトリから見た印象では、三番隊は「隊長のヴィクラムに心酔する、ちょっとアホで陽気な兄ちゃんの集団」だった。そんな彼らの中に、国事犯に与する者がいるとは思えない。  三番隊の隊士たちとは以前から面識があるせいで、認識が甘くなっているだけなのかもしれないが。 「こういったことの処理はヨイチの方が向いている」  答えるヴィクラムの横顔に感情はなかった。少なくとも見かけのうえは。  心に何かが引っかかったサヴィトリは、ヴィクラムの首に強く抱きついた。唐突だったせいが、ヴィクラムの(たくま)しい身体がわずかによろめく。 「どうした」 「身近な人が裏切るって、嫌だね」  サヴィトリの中で、とある記憶が甦った。月のない夜の出来事だ。  自分の中では割り切った、解決したつもりだったが、かさぶたがまだ残っている。 「ああ」  平坦な相槌を打つヴィクラムの顔は、サヴィトリからは見えない。
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