4-3 裏切者

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「その……大丈夫?」 「何がだ」 「完全にお節介で、余計なお世話かもなんだけど、少しだけ落ち込んでいるように見えたから」  ふっ、とヴィクラムが息を吐きだすのが聞こえた。 「問題ない。それにしても、ずいぶん殊勝なことをしてくれるのだな」  ヴィクラムの腕がサヴィトリの腰にまわされる。何かを知らしめるようにぎゅっと力が込められた。 「いや、大丈夫ならいいんだ。全然まったく気にしないで。うん、ええと、それじゃあ、デートだっけ? いやそれは隊士たちに対する建前か。どこかで適当に時間を潰してから宿に戻らないと――」  遅まきながらよくない気配を感じとり、サヴィトリは自然と早口になった。両手を突っ張って身体を離そうとするが、逆に強く抱きすくめられてしまう。 「せっかくだ、(なぐさ)めてもらおうか」  ヴィクラムは落ち着いた声で囁き、悪漢のように口の端をかすかに歪めた。
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