4-4 夜空の瞳は心を奪う★

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「誘ったのはそっちだろう」 「何も誘っていない!」 「だが俺はその気になった」  ヴィクラムは真剣な瞳でサヴィトリを見下ろした。サヴィトリの顔に手を添え、親指で頬を撫ぜる。  サヴィトリは視線を逸らし、下唇を軽く噛んだ。皮膚の一枚下で何かがざわざわしている。 「……カイは、あの時会議室にいた全員が、私のことを好きだと言った。私が認識している好きとは別の感情なのだろう。どうしてヴィクラムは私のことが好きなんだ? 私は、ヴィクラムの好みとはかけ離れているだろう」  サヴィトリの、ヴィクラムに対する印象は最悪だった。  ちょっとしたことで口論になり、腹を立てたサヴィトリが怒りに任せてヴィクラムに頭突きをかましたのが一番最初だ。  少なくともサヴィトリはその時、「戦闘能力こそ高いが、いけ好かない無口な野郎」くらいにしか思っていなかった。それが、今では「憧れる強さ」に変わっている。
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