4-5 アップルシードルを片手に

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4-5 アップルシードルを片手に

 国有林の近くには宿場があり、そこが今日の宿泊場所だった。貴族階級が国有林で狩りを楽しむ際の休憩所としても使用されるため、サヴィトリが想像していたよりも小綺麗な宿だった。  サヴィトリは翌朝に、護衛の五番隊と共に王都へと帰還するが、ヴィクラム率いる三番隊は南下して街道沿いの警邏(けいら)に当たる。  シフト中であるとはいえ、危険を伴う任務に次期タイクーンを長期間同行させるわけにはいかない――というのが補佐官としてのカイラシュの意見だった。  今までのカイラシュであれば、討伐任務への同行自体を即却下していただろう。どんな心境の変化があったかはわからないが、ずいぶん譲歩してくれたと思う。  サヴィトリとヴィクラムが宿に着いた瞬間、けたたましい音が響き渡った。 「「「隊長お帰りなさい!!!!」」」  宿屋の扉が吹き飛ぶような勢いで開け放たれ、赤ら顔の屈強な男たちがわらわらと出てきた。  三番隊の隊士たちだ。ヴィクラムに対する接し方でわかる。
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