4-5 アップルシードルを片手に

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「立ち話で終わるような内容じゃないでしょうし、殿下さえよろしければ食事を取りながらどうですか? 酒が大丈夫なら、市場には出回らない自家製のアップルシードルなんかもあるそうですよ。ま、酒飲みばかりでちょいとうるさいですがね」  ヨイチは手慣れた様子でサヴィトリを食堂までエスコートする。  食堂は羅刹の隊士で埋め尽くされていた。  貸し切りにしているため、他の客はいない。  先に連れてこられたヴィクラムは大勢の隊士に取り囲まれていた。注がれる酒を水でも飲むかのようなスピードで飲み干している。  まわりにいる隊士たちは思い思いに喋り、飲み、食い、食堂を明るくにぎやかな雰囲気にしていた。  サヴィトリとヨイチはカウンター席に横並びに座り、食事と飲み物を注文する。 「生物兵器を持ち込んだ奴ですが、軽く話を聞いた後、五番隊の奴らに王都に護送させました。補佐官様が手ずから尋問したいそうで」  注文した二人分のガレットとアップルシードルが運ばれてから、ヨイチは話し始めた。
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