4-5 アップルシードルを片手に

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 不意に背後で歓声が上がる。  首をまわして見てみると、何人かの隊士がテーブルに突っ伏していた。その周辺にはいくつものビアマグが並び、あるいは転がっている。  ヴィクラムが淡々とビアマグを呷っている隣では、隊士が青ざめた顔をしてマグの取っ手を握りしめていた。  はやし立てるように周囲の者が野次を飛ばしたり手を叩いたりしている。 「いつもの飲み比べですね。ヴィクラム対隊士全員の。あいつには絶対勝てないんだからやめときゃいいのに」  ヨイチはちらっと一瞥し、肩をすくめた。 「三番隊は本当に仲が良くて羨ましいな」  サヴィトリは少し冷めたガレットを切り分け、口に運ぶ。目玉焼きの下に敷かれたベーコンの塩味が強く、それが酒を進ませた。 「隊長の彼女が来てるのに自重しないでアホ騒ぎするような奴ばっかですけどね」 「いや、変に気を遣われるよりよほどいい。それに、私は嫌われていると思っていた」 「隊士一同、超面白いと思ってますよ。同じ女は二度抱かないだとか言ってたあいつの相手が陽光姫で、しかも複数恋人がいるうちの一人だなんて」  ヨイチは含み笑いをし、肩を震わせた。
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